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Looking for the Nostalgia

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ラムネ 6

ラムネ前回

理由はどうあれ、担任が嫌味な言い方をして
稲田を刺激したのはハッキリ言ってバカだと思う。
だけどその後の判断は、まぁ担任は呆気にとられて動転してしまい、
適切な判断と迅速な行動ができなかっただけだとは思うけど、
結果的にはあれで良かったのだとも思う。
もし無理矢理制しようとしたり、それこそ消火器やバケツに汲んで来た水をかけたり、
他の教師を呼びに行くだとかしていたら、もっと大事になっていたに違いない。
あとはこの出来事を、他の教師にイチイチ報告しなければいいなと
一瞬不安に思ったけれど、どうもこの担任はプライドが高いみたいだから
それはまぁ大丈夫だろう。
うまく対処できなかった事を同僚に知られたり、
そう思われる事も自分が許せないだろうし、
報告をする事によって稲田に何らかの処分が下されたとしたら、
恥をかかされた報復だと生徒に思われる事も許せないはずだ。

面倒な事を増やしたり、いざこざを起こしたり、
それこそ自尊心を損ないたくなければ教師の余計な正義感や熱血なんて必要ないんだよ。
だいたい生徒は端から教師にそんなものは、
ましてや理解や愛情だって求めていないんだから。
特に「生徒の身になって」とか、「生徒の目線になって」とか言う教師は
大っ嫌いで信用できない。
第一、「生徒の目線」と言う時点で既に視点が上にあるという事を
言っているようなものじゃないか。
教師と生徒は解り合えるだとか、心を通わせられるだとか、
そんなものは幻想に過ぎないという事は高三にもなれば誰だって解る。
それこそaとbのまったく別々の記号。
始めからそう認識していればお互いに余計な関わり合いをする事もなく、
決して交わらずに、平行線のままでことなきを得るじゃないか。

「ウケたよな〜。」
早速、担任が消火器を持って来た姿をネタにして笑い合っている奴等の声が聞こえた。
先生早速バカにされていますよ。
やっぱり平行線で良かったんじゃないですか?
それに本来ならさっきの時間で済ませたかった行事の説明も途中になって、
次のホームルームまで持ち越しになっちゃったじゃないですか。
平行線で充分なんですよ。
平行線、正にイコールじゃないですか。
だから余計な干渉はして来ないでください。
こっちもしませんので。
稲田の机を雑巾で拭きながらそんな事を思っていた。

教室に、紙の焦げた臭いとジュースの甘い香りが交ざった気持ち悪い臭いが、
まだほんのり漂っている。
誰かが窓を開ける音が聞こえた。
ほらみろ、俺以外の誰かだってイコールを求めている。
自分達の不快感だけじゃなく、次の授業の教師に臭いで何か勘づかれたら面倒だもんな。

結局この日、稲田は教室に戻って来なかった。
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by shimizumigiwa | 2010-09-03 06:00 | ラムネ
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