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Looking for the Nostalgia

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ラムネ 7

ラムネ前回

案の定、稲田はテーブルマナーに来なかった。
というよりあのプリント燃やし事件の日以来ずっと学校に来ていない。
嫌味を言われた事がショックだったという訳ではなくて、
多分初めからテーブルマナー自体行く気がなかったのだろう。
そう言えば去年の修学旅行は来ていたっけ?
クラスが違ったとはいえ、あれだけ存在感のある奴の印象がないという事は、
やはり来ていなかったのだろうか。
配られたトランプのカードを手に取りながら、そんな事をぼんやりと思っていた。

それにしてもテーブルマナー一日目はこちらも案の定最悪だった。
行きの貸し切りバスでは、後ろの方に座っている浮かれた奴等が、
カラオケをやりたいと言い出して、お得意の必要以上な馬鹿騒ぎをしていた。
これからマナーを学びに行く人間を乗せたバスの車内が
この有様だと言うのだから救いようがない。

そんな中、僕は持って来ていた文庫本「中原中也詩集 大岡昇平編」を読んでいた。
ちなみに中原中也の詩集を読むのは二冊目。

中原中也を知った切っ掛けは、一年位前に「眠兎」という漫画を読んだら
中也の詩が引用されていて、それにグッと来るものがあり、
さっそく文庫本の「河上徹太郎編」を買って読んだ。
何と言うか、静まり返った人気のない哀しげな風景というか、
錆び付いた鉄屑の匂いがするような空虚な世界観にシビレまくった。
普段自分が抱えている行き場のないモヤモヤが全部詰まっているような気がしたし、
何よりこの憤りも含みのウジウジさ加減に共感して、自分を投影させていた。
特に「骨」と「思ひ出」という詩が好きだ。
ただ、自分とは決定的に異なるところがある。
それは、中也は美男子だというところだ。
ビジュアルが良ければ、そのウジウジさ加減や気性が荒く酒癖の悪いところも、
その人の印象を形成する魅力や個性の一部として成立するのだろうけれど、
僕みたいなブサイクな奴がそこまでさらけ出すと、
ただの陰気臭くて面倒臭い嫌な奴になってしまう。
結局そんなもんだよ。

まぁそれはともかく、テーブルマナーに行くにあたって、
どうせ退屈だろうから暇つぶしの為に何か本でも持って行こうかなと、
本屋を物色している時にこの「大岡昇平編」を見掛けて、
「河上徹太郎編」には載っていない温泉集であったり、
未刊詩篇に読んだ事のない詩が沢山載っていたので買う事にした。
それと、カバーにあの有名な肖像写真が載っていないところが何となく良いと思った。
初期短歌も載っていて、これがまたシビれるものだった。
「人みなを〜」の歌なんて最高じゃないかと思っていたところに、
奴等が披露する馬鹿騒ぎと悪趣味な歌だ。
更にはバスの揺れも相俟って何だかちょっと酔ってまった。
もう本を読むのはあきらめよう。
第一、妙なBGMのもとで読みたくはないし、
せっかくのイメージがメチャクチャにされてしまう。

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by shimizumigiwa | 2010-12-13 02:00 | ラムネ
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