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Looking for the Nostalgia

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ラムネ 8

ラムネ前回

僕は前の方の席に座っているから顔は見れないけれど、声からして恐らく、
いつも教室でおチャラ気ているヤンキー気取りの男が、最近のヒット曲を歌い終わると、
そいつの近くの席にいる女子達が「うま~い!」「いい感じ~!」などと
甘ったるい歓声を上げていた。
「この歌良い歌だよね~」
「だよね~、俺もこの歌好きなんだよ。でも歌ったのは今日が初めてだな」
近くの女子に話しかけられてヤンキー気取りはそう答えた。
嘘つけよ。
どうせ女子にウケる為に女子にウケそうな曲を聴いて、
いつか披露する時の為に自分の部屋で散々歌って練習していたんだろう?
それで今が待ちに待った「いつか披露する時」だったんだろう?
そういやお前いつもいきがっているくせに、稲田がプリント燃やした時に
ビビって椅子から腰浮かせてなかったっけ?
ただでさえ酔い気味なのに、そいつが部屋で歌詞カードを片手に
必死で練習している姿を想像すると本気でゲロを吐きそうだった。

僕はカラオケそのものに行った事がない。
まぁ誘われる事もないのだけど、大体金を払ってまで人前で歌って、
その上こんな風に聴きたくもない上っ面な量産型の歌まで
言う程でもない歌唱力で聴かされて、
こんな風にいかにはしゃげるかがステータスみたいな感じで競い合って、
何が楽しいのかさっぱりわからない。
それが青春の一つの要素だとでも言うのだろうか?
だとしたらお前らの青春とやらは、作られた情報による流行や風潮に惑わされ、
支配されたものという事だな。

「そういやブルーハーツって最近解散したらしいぜ」
ヤンキー気取りの近くにいた別の男、声からして校内でもいつもつるんでいる
ヤンキー気取り2号が唐突にそう言った。
選曲リストで、ブルーハーツの欄を見ていたのだろう。
「マジかよ!?俺ブルーハーツ結構好きだったのにな~」
1号が反応する。
普段ヘビィメタルばかり聴いていて、最近の邦楽に詳しくなく興味もない僕でも
ブルーハーツというバンドの存在くらいは知っている。
そう言えば稲田の机を拭いた時、色んなバンドの名前と一緒に
ブルーハーツの名前も彫ってあったのを思い出した。
それにしても…。
「超悲しいよな。てことで解散記念に歌っちゃいますか」
そう言って2号がバスガイドさんに番号を指示した。
やっぱりな。
要するにその程度なんだろう?
「結構好き」なくせに解散を知らないんだろう?
「超悲しい」くせに「記念」なんだろう?
つまりカラオケで盛り上がれるレパートリーが欲しいが為に聴いていたんだろう?
上っ面ばかりでどの歌手の歌の真意も歌詞もお構いなしなんだろう?
というかそんなもの端から気にもとめていないんだろう?
こんな奴等の歌声なんかこれ以上聴いていたら酔いが悪化するどころではない。
僕は鞄からウォークマンをそっと取り出した。
こいつで全てをシャットアウトしよう。
ウォークマンを持って来る事は禁止となっていたのだけど、担任もまさか
バスの中を歩き回って監視するはずもないし、音漏れさえ注意すればバレないだろう。
そう思ってしばらく聴いていたら、ヘビィメタルサウンドが直接ガンガン響いて
頭が痛くなってしまった。
多少酔っているところにLOUDNESSのCRAZY DOCTORは文字通りヘビィだった。

「銀紙の星が揺れてら~」
ウォークマンを断念して窓の外をぼーっと見ているところに奴等の歌が聴こえて来た。
銀紙の星…確か中也の詩にもこんな感じの表現てなかったっけ?
ガンガンする頭の中でぼんやりと思ったが、それ以上思考を働かせる気力はなかった。

頭が痛い。
気持ち悪い。
何だか本格的に酔ったみたいだ。

この行事はのっけからホントに最悪な気分になった。


CRAZY DOCTOR
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by shimizumigiwa | 2010-12-30 07:48 | ラムネ
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