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Looking for the Nostalgia

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ラムネ 12

ラムネ前回

小学校二年生の時だった。
その頃僕は今住んでいる神奈川ではなく、
千葉の北小金という所に住んでいたのだけれど、
通っていた学校のクラスの担任に嫌われていた。
ピンク色のミニスカートのスーツが似合う美人な女の先生だった。

なぜ嫌われていたのか、原因や明確な理由は、今になっても、
わかるようなわからないようなといった感じだけれど、
結局は何となくいけ好かないとか、生理的に受け付けないという事に尽きるのだろう。
イジメに理由が無いのと同じ事だ。
これまでも人を嫌う理由として、「生理的に受け付けない」という
都合の良いような、でもやっぱり本質的な気もする言葉を
幾度となく聞いてきたし、そう思われてもきた。

もちろん僕以外に、クラスにはガキ大将的な男の子、
常に落ち着きがなく、よくケンカをしたり女子を泣かしたりしている、
いわゆるどのクラスにも一人は必ずいる問題児だって、ちゃんといた。
だけどその問題児は、担任に嫌われるどころかむしろ気に入られていた。
授業や学級会で何か発言を求められれば、ハキハキとした口調で答えるし、
時には冗談を交えた受け答えをして、
クラスの皆を笑わせるムードメーカーでもあった。
その為、問題を起こす事があっても、
基本的には明るく素直で元気な男の子というのが、担任を含めた周囲の評価であった。
何よりそいつは整った顔をしていたので、クシャッと笑った顔がまた爽やかで、
それだけで素直な子に映り、好印象を抱かせるからであろう。
そういうタイプは
「まったく元気が良過ぎるんだから〜」
といった憎めないキャラとして許されるのが常だ。
そして多くの場合、当の本人もその事を自覚していて、
例え小学生であっても、それを利用し、先生や周囲をうまく出し抜く。

それに比べて僕は、授業で指されたり発言を求められても、
声も小さく、モゴモゴとうまく答えられなかったり、
黙ってしまう事もよくあった。
加えて普段から、あまりクラスメイトとも触れ合ったりせずに、
一人でいる事が多く、ひいては元々がふて腐れたような顔つきだから、
ふてぶてしくて陰気臭い、気味の悪いガキという印象だったのだろう。

担任はよく授業で、自身が手書きで作成した問題を印刷したわら半紙を配り、
小テストを行なった。
それが一学期の後半頃から、提出しても、
僕のだけは採点どころか赤ペンのチェックすらしてくれずに、
そのまま返ってくるようになった。
始めは僕の字が汚なくて読み辛いという意思表示なのだろうか、
などと思ったりもした。
それで文字にも神経を注いでみたけれど、
どんなに丁寧な文字を書く事を心掛けて提出しても、状況が変わる事はなかった。

小学生低学年という小さく狭い、ごく限られた世界の中では、
担任が僕に抱いているその事実を認めるのが怖かったというのもあるけれど、
とにかくどう受け止めて、どう対処すれば良いのかわからなかった。

腑に落ちない気持ちを残したまま迎えた夏休みのある日、
夕食時にテレビを観ていた。
トーク番組で売れっ子の芸能人が話している。
「小学生の時だったんですけど、僕は勉強が全然ダメだったんです。
テストも全然解らなくて…。それでテストの裏に絵を描いて提出したら、
その絵に花丸が付いて返って来たんですよ」

この瞬間、僕は全身の血が逆流するような感覚に襲われた。
衝撃で持っていたカレーのスプーンをホントに落としそうになった。

これだ。

僕は思った。
あれからずーっと胸につっかえている、小テストに纏わるどんよりとした
灰色の雲を晴らす手立てはこれしかないと。
ともすれば、クラスの問題児と同じように、
勉強がダメだった芸能人と同じように、
欠点はあれど、一人の生徒として認めてくれるようになるかもしれない。
この日から夏休み中その事ばかりを考えて過ごすようになった。

そうして新学期最初の小テストの日を迎えた。
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by shimizumigiwa | 2011-04-03 14:27 | ラムネ
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