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Looking for the Nostalgia

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ラムネ 13

ラムネ前回

いつものように前の席から順番にわら半紙が配られる。
まずは解答を丁寧な文字で書いてから。
ここに抜かりがあっては元も子もない。
絵を描く時間も考慮に入れて、素早く問題を解けるように予習もバッチリしてきた。
そして問題を全部終え、いよいよ計画を実行する。
まずはそっとプリントを裏返す。
採点の時に初めて目にするようにしなければならないから、
何か不審な動きがあってバレてしまってはならないのだ。
問題は何を描くかだ。
これには相当頭を悩まされたが、今日を迎えるにあって、
試行錯誤のうえ結論を導き出していた。
担任の似顔絵も思い付いていたけれど、さすがに狙い過ぎだし、
完成度によっては余計に気を悪くさせる可能性がある。
僕は絵がそれほどヘタという訳ではないと思うけれど、
似顔絵で満足させられるほどの自信はさすがになかった。
ラクガキでそこそこ描き慣れているのは、キン肉マンに出てくるウォーズマンだった。
しかしこれに関しては、ふざけていると捉えられかねないし、
担任がウォーズマンを知らない可能性が高い。
明るく元気で子供らしいイメージ、尚且つ女の人が喜びそうなもの。
花…、そうだヒマワリだ。
ヒマワリを嫌いな人なんてまずいないだろう。
形もそんなに難しくない。
夏休みを過ごした後だから、タイミング的にもピッタリだ。

計画は無事に遂行された。

返却日、僕は期待と不安が入り交じる気持ちで待っていた。
小テストは机の列ごとに返却され、一番前の席から順番に回って来る。
前の席の奴から受け取る時に、プリントの表がチラッと見えてしまった。
表はいつも通りだった。
少しガッカリしたけれど、でもここまでは予測の範囲内だ。
一呼吸をおいて、一気にひっくり返してみる。

僕は硬直した。
教室内のざわつきがフェードアウトしたかに思えた。

花丸はなかった。
いや、結局何もないという結果も、予測の範囲内と言えばそうだった。
それ以上に予測を遥かに上回るモノが目に飛び込んで来たのだ。

ヒマワリの上には、勢いのある赤い線が二本交わっていた。
その脇には、長方形のような形に何かを赤く塗り潰した跡があった。

二本の赤い線をひいた勢いと感情にまかせて、何か汚い言葉を書き殴ったのだ。
でも後から、これがもし親の手に渡り、
その言葉を見られたらさすがにマズいかもしれないと思い直し、
上から塗り潰した跡だという事は容易に想像できた。

赤ペンが入っていたのはその時くらいだった。

今にして思えば、あざとさが余計にカンに障ったのだろうと推測できるし、
自分でもちょっとそう思う。
でもその時はそれなりにショックだったし、そこから得た教訓は、
この手の美談が成立するには、素直な性格で、容姿もそこまで悪くなくて、
教師に気に入られている事が大前提なのだなという事。
結局嫌われていたら何をしてもダメなのだという事。
下手に行動を起こせば、むしろ悪化するという事。
またこれは少し後になってから分かった事だけど、つまり教師は、
例え小学生とは言え、異性は異性として捉えているという事だった。
テレビで美談を話していたあの芸能人だって、男前の人気者だったじゃないか。

だけど、これで終わるのならまだ良かった。
ただ嫌われているだけで済むのなら。
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by shimizumigiwa | 2011-04-03 14:52 | ラムネ
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